日本近代文学会東海支部公式blog

⽇本近代⽂学会東海⽀部会員各位 

2024213 

⽇本近代⽂学会東海⽀部 

     ⽀部⻑ 宮崎真素美 

   幹事 奥村 華⼦ 

藤⽥ 祐史 

 吉田 遼人

 

日本近代文学会東海支部2023年度シンポジウム及び第76回研究会のご案内

 

春寒の候、皆様におかれましては、ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。 さて、日本近代文学会東海支部では316日(土)14時より、2023年度シンポジウム及び第 76 回研究会を下記のとおり対面/オンラインのハイブリッド形式で開催いたします。対面ベースの開催ですので、多くの皆さまが会場まで足を運んでくださると幸いです。 なお、当日の資料及びオンライン参加希望者のためのリンクや会場案内図は開催の週にメールにて改めてご案内いたします。 

東海支部では支部会員以外のご参加も歓迎しております。ポスター(紙での配布はございません)も別に用意しておりますので、ぜひ所属先等でもご周知くだいますようお願い申し上げます。

 

*** 

日本近代文学会東海支部2023年度シンポジウム・第76回研究会

 

【日 時】 2024316日(土)14001740

【会 場】 愛知学院大学 名城公園キャンパスALICEタワー 7701

      対面・オンラインによるハイブリッド開催

 

【特集】 短歌・俳句研究の現在、そして未来
 

【シンポジスト】

加島正浩(富山高等専門学校)
分断と忖度の外側―大牧広の「社会性俳句」の分析を通じて

草木美智子(法政大学)

栗木京子短歌の可能性とそのゆくえ

李哲宇(名古屋大学大学院博士後期課程)
日台俳壇の交流――1990年代から2010年代の「台北俳句会」を中心に

【ディスカッサント】

青木亮人(愛媛大学)

***

2023年度シンポジウム・特集趣旨 

短歌・俳句の研究は日本近現代文学研究の一分野でありながら、近世以前の和歌・俳諧研究との連続性、また結社・実作者による批評との関係など、小説や口語自由詩の研究とは異なる困難と魅力を抱えながら成長してきた。その過程には正岡子規の研究のように高い水準の達成も見られるが、大学における研究者は依然少数であり、結果として小説に対するような多様なアプローチの開拓や発展に至っていない。また、短歌と俳句双方の関係や他の文芸ジャンルとの関係を論じる試みはさらに僅少であり、ジャンルを超えた検討も課題である。

 本特集では上記のような問題意識から出発し、元来の子規・茂吉・白秋といったカノンではなく、現在に近い歌人・俳人である栗木京子(1954-)、大牧広(1931-2019)、そして台湾の黄霊芝(1928-2016)を研究対象として扱いながら、短歌・俳句研究の可能性を探求する。シンポジストの3名はいずれも若手の研究者であり、今回の発表では各々が「社会」との関連のなかで作家たちを議論の場に引き出すことを試みる。この点は発表後の討議において、ディスカッサントに俳句研究のトップランナーの一人である青木亮人氏を交えることで、新しい作家たちを研究とさらに広い〈場〉に引き出すための道筋を探りたい。なお、討議では抽象的な結論を求めるのではなく、具体的な作家・作品を念頭に若手研究者が感じている困難と魅力を語り合うことで、来場者からのコメントも含めて「短歌・俳句研究の現在、そして未来」と向き合う時間を創ることができればと願う。
 
***

タイムスケジュール

13:3014:00    受付

14:0014:05    開会・趣旨説明

14:0515:45 研究発表

15:4516:10  休憩・オンラインでの質問受付

16:1017:30   全体討議

17:3017:40   閉会挨拶        

***

研究発表要旨

 加島正浩「 分断と忖度の外側大牧広の「社会性俳句」の分析を通じて」 

「社会性俳句」というと加藤楸邨、中村草田男らによって1950年代後半から60年代後半頃までに盛り上がった、一過性の現象として狭義には捉えられる傾向にある。一方で広義には同時代の社会現象を詠みこむ俳句を「社会性」として捉える傾向も依然として存在する。本発表では、〈社会性俳句はいづこ巣箱朽ち〉(『正眼』20144月)などと晩年まで「社会性」を有する俳句を詠んだと評価される大牧広を扱う。まず一過性の現象を指す用語を越えて「社会性俳句」という用語がどのように使用されているかを確認する。そのうえで大牧の「社会性俳句」の特徴を〈かの人の敵は「九条」破芭蕉〉(『朝の森』(201811月)のように、他とは異なる自らの思想を明確に詠みこむ点にあることを示す。そして最終的に、自らの思想を忖度なしに発することができる〈場〉として大牧の俳句や句集があることを示し、その点に〈日本の冬よ忖度ゆきわたり〉(『朝の森』)と大牧が詠む〈忖度〉の空気を打ち破っていく可能性を見出したい。

 

 草木美智子「栗木京子短歌の可能性とそのゆくえ」

現代歌人栗木京子(名古屋市出身)は、二十歳で「観覧車回れよ回れ想ひ出は君には一日〔ひとひ〕我には一生〔ひとよ〕」を発表後、相聞歌で注目される。だが、現在の栗木京子短歌の特質は、鋭い視点で「社会」「時代」を詠む「社会詠」にある。本発表では、栗木短歌の「社会詠」に着目し、以下のような既発表の拙論の指摘を紹介しつつ、今後の栗木短歌の可能性とそのゆくえについて私見を述べる。①「数字」を多用し、自歌に「事実を提示」し「時代を証言」する「クロニクル(記録)」を持たせる手法を確立した。②一貫し詠むテーマが国内外を問わず存在する(例:世界各地の戦争、テロ、政治、東日本大震災、北朝鮮拉致被害)。これには、「風化させない」という栗木の強い意志が表出している。③特徴は、主にメディアの情報を基に詠み、レトリックを多用することである。しかし最近はレトリックに依存せず、ストレートに詠む手法を展開する。これには、栗木の「視点」の変化(傍観者→当事者→行動者)が影響する。 

 

 李哲宇「日台俳壇の交流――1990年代から2010年代の「台北俳句会」を中心に

発表者は現在、戦後の台湾俳壇と関連する日本の俳句会及び俳人に焦点を当て、日台俳壇の交流及び俳人の思想の研究に取り組んでいる。例えばこれまでには、1970年に成立した「台北俳句会」、1980年に発足した「春燈台北句会」、1988年から2010年まで存在していた「馬酔木燕巣会台湾句会」などについて分析を行ってきた。本発表は、「台北俳句会」の会報と句集を対象に、日本との具体的交流のありさまを考察する。2004年に「台北俳句会」主宰の黄霊芝は『台湾俳句歳時記』の出版により、「第四回正岡子規国際俳句賞」を受賞した。これを契機にして「台北俳句会」が日本俳壇に知らされ、日本の俳人も自発的に台湾俳壇と関わるようになった。歳時記を執筆し始めた1989年から、『台湾俳句歳時記』が出版した2003年、そして黄霊芝が他界した2016年を境目とし、「台北俳句会」の活動を三つの時期に分けて整理する。これにより1990年代から2010年代までの「台湾俳句会」の日本俳壇との交流、接触をまとめ、それらの交流から浮かび上がる日台俳人の思考を明らかにしたい。

 

 ***

ご参加にあたって

お問い合わせ 日本近代文学会東海支部事務局  mailkindaiiin2014@gmail.com

対面参加の場合、事前登録不要です。どなたでもご参加いただけます。

オンライン参加の支部会員の方にはZoomURL及び資料を開催週にメールでご案内いたします。会員外でオンライン参加希望の方は大会の前々日までに上記事務局へお問い合わせください。

対面参加の方へ:会場最寄り駅の「名城公園駅」では、最寄りとなる2番出口が工事の関係で2月上旬から3月末まで封鎖されています。参加者の方々には、1番出口から少し迂回して来ていただくことになります。なお、会場周辺地図は後日発表資料の案内の際に添付いたします。

 

 

⽇本近代⽂学会東海⽀部会員各位 

20231218 

⽇本近代⽂学会東海⽀部 

    ⽀部⻑ 宮崎真素美 

   幹事 奥村 華⼦ 

藤⽥ 祐史 

 吉田 遼人

日本近代文学会東海支部第75回研究会のご案内

 

寒気いよいよ厳しき折、皆様におかれましては、ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。 さて、日本近代文学会東海支部では1223日(土)13時より、第 75 回研究会を下記のとおり対面/オンラインのハイブリッド形式で開催いたします。今回は東北支部との合同開催となります。対面ベースの開催ですので、多くの皆さまが会場まで足を運んでくださると幸いです。

東海支部では支部会員以外のご参加も歓迎しております。ぜひご所属先等でもご周知くだいますようお願い申し上げます。

 

*** 

日本近代文学会東海支部第75回研究会 /東北支部2023年度冬季大会  合同開催

 

日時:20231223日(土)13時~1630 

 

会場:名古屋大学東山キャンパス 文系総合館7階カンファレンスホール 

 

開催形態:対面・オンラインによるハイブリッド形式 

 

発表者

-----------------------------------------------------------

◯1305分~1400

飯野向日葵(東北大学大学院文学研究科博士課程前期1年)

発表題目:海野十三における蠅生体と機械の境界撹乱

コメンテーター:小松史生子(金城学院大学)

発表要旨:

海野十三は、「恩恵と迫害の二つの面を持つのが当今の科学だ」という認識のもと、多くの科学小説を発表した。そのなかで、人造人間やサイボーグを描き、人間と機械の境界の揺らぎを描いた。また、「電気鳩」「青い兵隊蜂」「じんぞうねこ」のような動物ロボットも描き、動物と機械をも結びつける。このような発想には、機械技術の進歩や戦争を背景としながら、海野の人間と技術への分析的なまなざしと、科学のあり方を問い直す姿勢が表われている。これら人間と動物に加え、海野の小説において繰り返し描かれる存在が蠅である。蠅は、機械と結びつくだけでなく、さまざまなかたちで生体と機械との境界を撹乱するものとして現れる。

本発表では、「蠅」を手がかりとして「俘囚」「蠅男」への連関、「ふしぎ国探検」への接続を明らかにする。このような「蠅」の変奏のなかで、科学技術の用い方や蠅と人間の関わりを分析することを通じて、海野の小説における生体と機械の境界撹乱の様相を探る。

-----------------------------------------------------------

◯1410分~1505

久永うらら(金城学院大学大学院文学研究科後期課程国文学専攻1年)

発表題目:科学者の光と闇――森鷗外「魔睡」論――

コメンテーター:井上諭一(弘前学院大学)

発表要旨:

 本発表では森鷗外「魔睡」(1909)を対象に、妻を媒介にして、磯貝医師が大川博士に対し間接的に催眠術を施すというテクスト構造に注目したい。本作は磯貝が大川の妻に催眠術を施し、凌辱した疑いが語られる短編小説であり、先行研究では抑圧された〈性〉を顕在化させる装置としての催眠術という解釈がなされてきた。

 一方、催眠術を介した、大川と磯貝という二人の科学者を表裏一体の人物として語るテクスト言説のありようは、大川を信頼できない語り手に変化させる。その叙述は当時の科学言説の通俗化を背景にした〈語り=騙り〉の戦略性をうかがわせ、後の夢野久作「ドグラ・マグラ」(1935)などに見られる〈狂気の語り〉の流行を遠く用意するものであったのではないだろうか。
 本発表は鷗外「魔睡」において催眠術がおよぼすテクスト構造への影響を、科学/疑似科学を語る当時の言説場の分析と絡めつつ、物語の〈語り〉の系譜という視点で考察する。

-----------------------------------------------------------

◯1515分~1610

片 鐘煥ピョン・ジョンファン(名古屋大学大学院 人文学研究科博士後期課程 1年)

題目:遠藤周作の『深い河』に関するエコクリティシズム的考察

コメンテーター:渡部裕太(福島工業高等専門学校)

発表要旨:

戦後日本のカトリック文学を代表する作家遠藤周作の最後の純文学書き下ろし長篇小説である『深い河』の根底には「母なる神の河」が流れている。本発表では、このような神聖なる河に対して自然を大切にした遠藤の思想に基づき「エコクリティシズム」からの考察を試みる。また、「深い河」と共鳴した二人の人物、これまで「人生」より「生活」を追求してきた中年男性磯部と、虚無感に苦しむ愛の種火のない女性美津子のベナレスへの旅路に着目し、「失われた愛を求めて」いる彼らにとって「深い河」の意味は何なのかを分析する。『深い河』はヒンドゥー教の聖地ベナレスを舞台にし、そこでのキリスト教とその信者の物語を描く作品である。このように複数の宗教的観点が含まれている本作品の特徴、すなわち「宗教多元主義」的要素をエコクリティシズム的アプローチを通じて明らかにし、自然との共存と人間の相互理解を求めた遠藤の最後のテーマを究明する。

-----------------------------------------------------------

東海支部では、例会での発表者を募集しています。 

研究発表を希望なさる方は幹事(kindaiiin2014@gmail.com)までご連絡下さい。

このページのトップヘ